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【ネタバレ】蒲生邸事件
注意)多少のネタバレ

この記事は ネタバレを含む感想です。本の冒頭のみ知りたい方は、下の ■説明 の部分のみお読みください。

■著者 宮部みゆき
■星   ★★★★ 

蒲生邸事件
蒲生邸事件宮部 みゆき

文藝春秋 2000-10
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おすすめ平均 star
star永遠の夢、タイムトラベル
star夢はもろくも崩れ去り・・・
star後からなら何とでも言える

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■説明
孝史は受験のために都内のホテルにやってきた。受験といっても、予備校の受験。ホテルは父が手配してくれたのだけれど、ぱっとしない。壁にかけられた写真から、古くは蒲生邸と呼ばれていた屋敷が建っていた場所だと知ったが、ホテルには今はその面影も無いのだった。 そのホテルでの夜。孝史はホテル火災にあってしまう。

■感想
 裏表紙で「SF」とあったので期待はさほどしていなかった。でも、予想を裏切って面白かった。 日本SF大賞をとっただけのことはあるな。。と思った。 

 この本で、ものすごく大きな印象を与えるものが「歴史」。歴史に対して多少の変更を加えようとしても大きな流れは変えられない。結局つじつまを合わせて歴史は流れたい方向に流れていくという話を読んで、常々「自然」に対して人の力の及ばなさを感じていると同様に「たしかに歴史というものもそうかもしれない」と ふと思った。

 たとえば、最近の世の流れ。皆がそれが正しいと思っているわけではないはずなのに流れ始めたその流れを変えることができないもどかしさを思った。しかし、まったく歴史に太刀打ちできないわけではない。最後の最後、確かに大筋では変えられないけれど、小さなことは変わっている。そういう救いがあるところが宮部みゆきの本の好きなところかもしれない。

 絵本には「納得のいく結末」が必要という説があるらしいけれど、虚構の話であるならば、大人の本でも読み終わった後に底なしの奈落に突き落とされるしかない結末よりも、一縷の望みがある結末の方がやっぱり好きだ。

さて、その物語の本筋以外のところの話だ。舞台は昭和11年2月26日。2・2・6事件のあったその日を中心に展開される。
 現代から昭和11年にタイムトラベルした主人公は当時の社会を現代人の目で見る。

 仕事の多い時代だったろうなと、孝史は考えた。もちろん、選り好みはできないから大変だろうけれど、それでも、働くことの意味が、孝史のいる「現代」よりも、もっとずっとずっと素朴ではっきりしていただろう。煙草1箱でも、人の手を介さねば買うことのできない時代には、煙草一個を打って釣り銭を受け取ることにも、それにふさわしいだけの重みがあったのだ。


 
 というところを読んで、なるほどと現代を振り返った。煙草は自動販売機で買える時代。人と話すということはそれなりに相手の気持ちを慮る必要があるということ。そういう煩わしさを考えるとボタン一つを押せばコロリと煙草が出てくる自動販売機は本当に楽チンだ。時候の挨拶もしなくて良いし、不機嫌ならば不機嫌なまま買えばよい。
 そういう時代になったから、煙草を売るという仕事も「自動販売機ごときにできる仕事」になりさがってしまった。 自動販売機の代わりなので、買いに来る人も売り手とコンタクトを取ろうとしない。煙草名だけつげてお金を放り投げる人もいるだろう。 売る方も売るほうで、余計なことをしゃべらずに煙草を差し出せばよい。下手に話しかけると「鬱陶しい」と思われてしまうかもしれない。 人と人との意思疎通ができない世の中になってきているなと改めて思った。自分のことさえ考えていればよい世の中だ。
 
便利さを追求していったために、常日頃からいつも人のことを考えて生きていた世の中から、現在は自分のことさえ考えていれば良い世の中になりつつある。 そうして、人の気持ちを考えずに済む世の中になりつつある。 だから、そういう環境で育ってきた人は自己中になっていくのかもしれない。

 他人とのかかわりというのは、煩わしいものであるけれども、反対にかかわりがあるからこそ得るものも多いものだ。
 私はあまり、社交的ではないけれど、直接・間接含めて人と関わってこそはじめてわかることは多い。 煩わしい、面倒なものも結局は自分のためになっているということなのだろう。

 便利になりすぎて、人同士のかかわりが薄れてきた世の中だからこそ、人とのかかわりを見直してみる必要があるのではないかと思ったのだった。
| 【ネタバレ】本 | 10:41 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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